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東京地方裁判所 昭和44年(ヨ)2369号 判決 1971年8月31日

債権者

井村昭彦

外一名

右債権者ら訴訟代理人

新井章

外一名

債務者

日本国有鉄道

右代表者総裁

磯崎叡

右訴訟代理人

嶋沢秀行

外一名

主文

1  債権者両名が債務者に対して雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。

2  債務者は、昭和四四年九月一日以降本案判決確定まで毎月二〇日限り、債権者井村昭彦に対して金六万六八〇〇円、債務者藤森力に対して金四万三六〇〇円を仮に支払え。

3  訴訟費用は債務者の負担とする。

事実《省略》

理由

一仮処分申請の適否

本件仮処分申請は、債務者の総裁が債権者らに対し日本国有鉄道法三一条一項にもとづいていた懲戒免職処分が無効であるから債権者らがいぜんとして雇用契約上の権利を有することを本案として、その地位の保全を求めるものである。ところが、債務者は、右懲戒免職処分は公権力の行使に当る行政処分であつて、これに対する民訴法上の仮処分は行政事件訴訟法四四条の規定によって許されないのであるから、本件仮処分申請は不適法として却下すべきであると主張する。

しかしながら、債務者は一般の私人又は私法人が経営主体となつている民営鉄道とは異なる特殊の公法人事業体たる性格を有するもの(日本国有鉄道法二条)であるが、その行う事業ないし業務の実態は、運輸を目的とする鉄道事業その他これに関連する事業ないし業務であつて(同法三条)、国・公共団体又はその職員の行う権力的作用を伴う職務ではなく、民営鉄道のそれと何ら異なるところはない。また、債務者の職員は法令により公務に従事するものとみなされ(同法三四条一項)、その任免・給与・分限・懲戒等について国家公務員の場合と同様な規定(同法二七条ないし三一条)があるけれども、その法律関係のあらゆる面で一般の私企業にはみられない国家の優越的な支配関係を認める規定に律される国家公務員法の適用を受ける職員とはちがつて債務者の職員については同法の適用はない(日本国有鉄道法三四条二項)。そして、債務者の職員の労働関係に関しては公労法および補充的に労働組合法の定めるところによることとして(公労法三条)、その労働組合に広汎な団体交渉権が与えられて債務者と対等の立場において団体交渉事項に関し労働協約を締結する権利が認められ(同法八条)、債務者とその職員との間に発生した紛争については公共企業体等労働委員会による斡旋・調停・仲裁の制度が設けられ(同法二六条ないし三五条)、さらに不当労働行為については公共企業体等労働委員会による救済が認められている(同法三条、二五条の五)。右のような日本国有鉄道法・公労法の関係規定にてらして、債務者とその職員との雇用関係は、債務者を行政主体とする特別権力関係としてではなく、むしろ対等当事者相互の法律関係として、基本的には私法関係であると解するのが相当である。

したがつて、日本国有鉄道法三一条一項にもとづく本件懲戒免職処分は行政事件訴訟法四四条にいう行政庁の処分等に該当しないと解すべきであるから、債務者の右主張は採用することができない。

二被保全権利の存否

1債権者井村が昭和二一年三月四日に、債権者藤森が昭和三八年七月一日に債務者に雇用され、昭和四四年八月当時いずれも債務者の東京西鉄道管理局小金井電車区所属運転士として勤務していたものであること、債権者井村が昭和四四年五月三〇日中央線武蔵小金井駅から東京駅ほで第四〇〇T電車を運転し、同駅で折返し第五〇一T電車を運転して武蔵小金井駅まで帰る乗務に服すべきところ、右四〇〇T電車を東京駅まで運転しただけで同駅中央線ホーム二番線に放置したまま右五〇一T電車の乗務を放棄したこと、債権者藤森が同日同区間上り第四〇〇F電車を運転し、東京駅で折返し下り第五〇一F電車を運転して武蔵小金井駅へ帰る乗務に服すべきところ、右四〇〇F電車を東京駅まで運転しただけで同駅中央線ホーム一番線に放置したまま右五〇一F電車の乗務を放棄したこと、債権者らの右各乗務放棄行為が日本国有鉄道法三一条一項一号及び二号に該当するとして、債務者の総裁が昭和四四年八月七日債権者らに対してそれぞれ免職する旨の意思表示をし、同日右意思表示が同日債権者らに各到達したことはいずれも当事者間に争いがない。

2債権者らの右乗務放棄行為が、債権者らの加入している動労がいわゆる国鉄合理化計画に反対して同盟罷業を行うべきことを組合員に指令し、その組合員である債権者らが右指令に従つて債務者に対して労務の供給を拒否したものであることもまた当事者間に争いがなく、右罷業により、当時東京駅中央線ホーム二本が塞かれて後続電車が同駅に入ることができないで、多数の電車が運転休止及び遅延する事態が生じて債務者の業務の正常な運営が阻害されたことは後記認定のとおりである。したがつて、債権者らの右乗務放棄行為は公労法一七条一項の禁止規定に違反しておこなつた違法な争議行為というべきである。

そして、<証拠>によれば、債務者の定める就業規則が職員の服務の基準について日本国有鉄道法三二条一項及び二項と同旨の規定を(四条一項及び二項)もうけているほか「職員は、みだりに欠勤、遅刻あるいは早退し、又は所属上長の許可を得ないで、職務上の居住地又は執務場所を離れ、若しくは執務時間を変更し、職務を交換してはならない」と規定し(五条)、懲戒について「故なく職場を離れ又は職務につかないとき」(六六条六号)、「その他著しく不都合な行ないのあつたとき」(六六条一七号)を懲戒事由にあげていることが認められ、日本国有鉄道法が職員の服務の基準に関し「職員は、その職務を遂行するについて、誠実に法令及び日本国有鉄道の定める業務上の規程に従わなければならない」(三二条一項)こと及び「職員は、全力をあげて職務の遂行に専念しなければならない」(同条二項)ことを規定し、懲戒について「この法律又は日本国有鉄道の定める業務上の規程に違反した場合」(三一条一項一号)及び「職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合」(同項二号)を懲戒事由としている。したがつて、債権者らは本件争議行為により日本国有鉄道法三一条一項一号及び二号に該当するにいたつたものといわなければならない。

3債権者らは、国鉄職員の争議行為を禁止する公労法第一七条の規定は、憲法第二八条に違反し無効であるから、債権者らの行なつた乗務放棄に対してなされた本件免職処分は労働組合法第七条第一号に違反し無効である旨主張するが、公労法第一七条の規定は憲法第二八条に違反するものではないと解するを相当とするから(昭和四一年一〇月二六日最高裁大法廷判決参照)債権者らの右主張は、その前提を欠くものであつて、とうてい採用できない。債権者らは、債権者らの行なつた乗務放棄は単純な労務放棄であり、且つその影響も極めて小範囲のものであつたのであるから、右の如き争議行為について民事責任を課すことは憲法第二八条の趣旨に反する旨主張するけれども、債権者らの前記乗務放棄が公労法一七条一項違反の争議行為に該当することは、まえにみたとおりであるから、右主張も採用の限りでない。

4債権者らは、債権者らの行なつた乗務放棄は、いわゆる集団的労働関係における争議行為としてであり、しかもその目的・手段において正当な争議行為の範囲内にとどまるものであるから、これに対していわゆる個別的労働関係における服務規律違反として就業規則又は日本国有鉄道法に規定する懲戒処分の制裁ないし問責をおこなつてはならない旨主張する。しかし債務者の事業ないし業務の強い公共性にかんがみて、公労法一七条一項の規定は、その行為がたんなる債務不履行(同盟罷業)等の行為であつても、業務の正常な運営を阻害するものであるかぎり、これを違法とするものであつて、憲法二八条の保障する団体行動の一つである争議をする権利を制限するものである。したがつて、いわゆる事業法たる日本国有鉄道法の定める懲戒の規定(三一条一項)は、債務者の職員が争議行為として同法三一条一項の各号の一に該当する行為をした場合にその適用を排除すべき理由を見出しがたく、争議行為にも適用があるものと解するほかない。債権者らの右主張は採用しがたい。

5そこで本件免職処分が懲戒権の濫用に該るかどうかについて判断する。

日本国有鉄道法三一条一項の規定は、債務者の総裁は、同項の各号の一に該当する違反行為をした職員に対し、懲戒処分として免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができるとしているが、懲戒をするかどうか、懲戒の種類のうちどのような処分をするかは、違反行為の態様・程度に応じて、債務者の総裁の合理的な裁量に委ねる趣旨と解すべきである。そして、債務者の総裁の裁量権の範囲とはいつても、その懲戒処分は、職員の身分を保障する同法二九条、三〇条等の規定の趣旨にてらして、また、職員のした違反行為が公労法一七条一項の禁止規定に違反した争議行為である場合においては、とくに職員の労働基本権を保障した憲法の精神にかんがみて、必要な限度を超えない合理的な範囲にとどめなければならないと解するのが相当である。

以下本件争議行為についてみる。

(一)  債権者らの本件争議行為が動労の罷業指令にもとづくものであることはまえに認定したとおりであるが、<証拠>によると、つぎの事実を一おう認めることができる。

いわゆるEL・DL一人乗務制の段階的実施計画に反対して、勤労中央斗争委員会はいわゆる第六波ストライキとして半日ストを決行するにあたつて中央三電車支部(豊田、武蔵小金井、三鷹)には動労の組合員が少数であることを考慮して斗争の戦術効果をたしかめるために東京駅において同駅に乗り入れる電車の乗務員を管理する計画をたて、昭和四四年五月三〇日午前四時四〇分同支部に対しそのようなスト突入の指令を出した。右指令にもとづいて、動労中央斗争委員会の委員で東京地方拠点の最高責任者として派遣された杉山喜三男は動労東京地方本部書記長の役職にある高橋富治とともに組合動員者二〇名を引率して東京駅中央線ホームで待機していたところ、同日午前五時二〇分頃四〇〇F電車が、ついで五時四〇分頃四〇〇T電車到達し、それぞれ運転士である債権者藤森、同井村が運的台交換のため下車するやいなや、そのつどただちにこれを説得して罷業指令に服させた。債権者らは右杉山、高橋及び動員者らによつて囲まれるようにして連れ去られ、あらかじめ用意されたタクシーに乗せられて組合の管理下に入つたのであるが(尤も組合ではこれを称して自主参加方式というようであるが。)「組合の指令だから、ここからストに参加してもらう。責任は中斗(中央斗争委員会のことである。)の私がとる。」と杉山にいわれて、その場では、これに従うよりほかに途がないとして右指令に服したが、その職場を離脱するにあたつてそれぞれの電車の転動防止のブレーキ措置を講じたし、また杉山は債務者の東京南鉄道管理局及び東京西鉄道管理局の各労働課長あてに「組合の責任において債権者らを組合の管理下に収容した」旨を電話連絡した。

かように認められるから、その縁由的事情にてらして、債権者らの右罷業(怠業)参加をとくに厳しく責めるのは酷であろう。

(二)  債権者らが当時服務に係る仕業の勤務内容についてみるに<証拠>をあわせると、つぎのとおり一おう認めることができる。

債権者井村は、五月二九日から五月三〇日にかけて武蔵小金井電車区平日第三八仕業という勤務についたが、その内容は以下のとおりである、五月二九日一五時一四分電車区に出勤して出勤点呼を受け、仕業票を受け取り、当日の仕業関係掲示類を熟読し、必要事項を乗務日誌に記入するなど、乗務のための準備をし、乗務前に仕事点呼を受ける。同日武蔵小金井駅一六時九分三〇秒発車の一五〇二F電車(高尾駅発東京駅行)を同駅から乗り継いで運転し、一六時五一分三〇秒東京駅着、同駅において、段落し乗継ぎ(運転した電車が終着駅に到着した後、その電車から降車して後続の他の電車に乗継いで運転することをいう。)となり、後続の一六〇八F電車が一七〇九F電車(東京駅発青梅駅行)となり、同電車を運転し、一七時一分三〇秒東京駅を発車、一七時五八分三〇秒立川駅に到着、乗継ぎ運転士と交替降車する。同駅上り二番線より一八時一一分三〇秒発一七一〇A電車(高尾駅発東京駅行)に便乗(運転士が仕業票にしたがつて、乗継ぐため又は乗継ぎを終えた場合、在勤地から乗継地まで又は乗継地から在勤地まで、電車の運転をしないで乗務することをいう。)し、武蔵小金井駅到着となる。同日同駅一九時一五分発車の一八二五F電車(東京駅発福生駅行)を同駅より乗継ぎ運転し、一九時四六分福生駅に到着、同電車は折返一九二四F電車(福生駅発立川駅行)となり、一九時五一分同駅を発車、二〇時一一分立川駅に到着、同電車は立川駅より回送電車(客扱いを行わないで本線上を運転する電車をいう。)となり、引続き同駅から武蔵小金井駅まで運転、二〇時二二分同駅に到着後電車を電車区に入区させる。入区後到着点呼を受け、翌日の起床時刻まで電車区内の休養室(宿泊施設のあるもの)で休養し、この間に継続四時間以上の睡眠をとる。五月三〇日武蔵小金井駅乗継ぎ乗務のため、乗継ぎ電車発車時刻四五分前に起床して出場点呼を受け、同駅四時四六分発四〇〇T電車(豊田駅発東京駅行)を同駅より乗継ぎ運転し、五時三五分東京駅一番線に到着、同電車は折返五〇一T電車(東京駅発高尾駅行)となり、五時四〇分三〇秒同駅を発車、六時二九分三〇秒武蔵小金井駅に到着、乗継運転士と交替降車する。右降車後電車区にて終了点呼を受け、七時一五分勤務終了となる。債権者藤森は、五月二九日から五月三〇日にかけて同電車区平日四一仕業という勤務についたが、その内容は以下のとおりである。五月二九日一五時三二分電車区に出勤して出勤点呼を受け、仕業票を受け取り、当日の仕業関係掲示類を熟読し、必要事項を乗務日誌に記入するなど乗務のための準備をなし、乗務前に仕業点呼を受ける。同日武蔵小金井駅一六時二七分三〇秒発車の一六二〇F電車(高尾駅発東京駅行)を同駅より乗継ぎ運転し、一七時一〇分東京駅到着、同駅において、段落し乗継ぎとなり、後続の一六一六T電車が一七一七T電車(東京駅発豊田駅行)となり、同電車を運転、一七時一九分三〇秒東京駅を発車、一七時五六分三鷹駅到着、同駅において乗継運転士と交替、引続き同電車で武蔵小金井駅まで便乗、同駅で降車する。同日同駅一八時五二分三〇秒発車の一八一三F電車(東京駅発高尾駅行)を同駅より乗継ぎ運転し、一九時二七分三〇秒高尾駅に到着、同電車は折返一九一二F電車(高尾駅発東京駅行)となり、一九時三九分三〇秒同駅を発車、武蔵小金井駅二〇時七分到着、乗継運転士と交替降車する。降車後電車区にて到着点呼を受け、翌日の起床時刻まで電車区内の休養室で休養し、この間に継続四時間以上の睡眠をとる。五月三〇日は、出区時刻七〇分前に起床し、出場点呼を受け、四〇〇F電車(武蔵小金井駅発東京駅行)を整備して電車区を出区、四時二八分三〇秒武蔵小金井駅を発車、五時一八分東京駅一番線に到着、同電車は折返五〇一F電車(東京駅発高尾駅行)となり、五時二四分東京駅を発車、六時一三分武蔵小金井駅に到着、乗継運転士と交替降車する。右降車後電車区にて終了点呼を受け、六時五八分勤務終了となる。かような仕業内容について、債権者らは、それぞれ運転乗務の電車六本のうち最終の一本の乗務(時間にして四九分)を放棄しただけであり、その仕業の勤務時間に対する罷業(怠業)時間は、債権者井村の場合において一六時間一分に対し一時間三五分、債権者藤森の場合において一五時間二六分に対し一時間三四分であるにすぎないことが一おう認められる。したがつて、右罷業(怠業)がただちに乗務員の不適格性に結びつくものであり、又は責任の重大性にかんがみて国鉄始まつていらいこれまでに例をみなかつたことであるといつて非難するのは相当でないというべきである。

(三)  債権者らが前記電車の乗務を放棄した後において、別表A及びB記載のとおりそれぞれ電車の遅延及び運休が発生したことは当事者間に争がなく<証拠>によると、債権者らが五〇一F電車及び五〇一T電車の各乗務を放棄したことにより、東京駅中央線ホームが塞がつて後続電車が同ホームに入ることができなかつたし、また右五〇一F電車が七〇分、五〇一T電車が三三分それぞれ遅れて東京駅を発車するのやむなきにいたつたことから、別表A記載のとおり神田駅から吉祥寺駅までの途中駅において合計一八本の電車が九分三〇秒ないし三二分の抑制をよぎなくされたうえ、さらに別表B記載のとおり一九本の電車が運転を休止するはめになつたことが一おう認められる。

しかし、<証拠>を総合すると、途中駅における右電車の抑制・遅延は、約一時間の間に一八本にも及んだが、いずれも乗客員数の比較的すくない時間帯にぞくし、しかも午前七時までに収束されてラッシュ・アワーの混雑をさらに増幅させるにいたらなかつたこと、午前五時台から午前八時台までの中央線及び総武線の上下合計二二六本の電車のうち一九本が運休したが、ラッシュ・アワーの午前八時台での運休電車は中央線上り二七本中の二本だけであつたので、さしたる影響はなかつたことが一おう認められる。<証拠判断省略>したがつて、債権者らの本件乗務放棄により債務者の業務の正常な運営を阻害する結果を来したことは、これを否定し去ることはできないが債務者の業務に甚大な結果をもたらし、国民生活に重大な支障をきたしたとみるのは、正確をえたものではないといわなければならない。

(五)本件争議行為を含む前記半日ストの決行による職員の不利益処分についてみるに、<証拠>によると、動労中央斗争委員会委員で東京地方拠点最高責任者として同委員会から派遣され、右拠点斗争を指導したりなどした杉山喜三男が公労法一七条違反の責任を問われて同法一八条により同年六月に解雇されたほか、債権者らと同じように電車の運転乗務を放棄して罷業(怠業)に参加した職員のうち三、四名の者が減給の懲戒処分に付されたことが一おう認められる。

右に認定した(一)から(四)までの事実にてらして考えるに、債権者両名に対する本件懲戒処分は、その妥当性・合理性を欠き、債務者の総裁に認められた日本国有鉄道法三一条一項の定める懲戒権の合理的な範囲を著しく逸脱したものと認めるのが相当である。したがつて本仲免職処分は懲戒権の濫用として無効であるというべきである。

6そうすると、債務者と債権者らとの間における各雇用関係がなお存続し、債権者らは債務者に対してその雇用契約上の権利を有するといわなければならない。本件懲戒免職処分によつて右雇用関係が終了したとして、債務者が債権者らの就労を拒否し、そのために債権者らが就労できないでいることは当事者に争のないところであるから、債権者らは、債務者の責に帰すべき事由でその就労をはたしていないのであつて、債務者に対する賃金請求権を失わないことが明らかである。

本件懲戒免職処分当時債権者井村が六万六八〇〇円、債権者藤森が四万三六〇〇円の各月額給与の賃金をえ、毎月二〇日限りその支払を受けていたが、昭和四四年九月一日以降賃金の支払を受けていないことは当事者間に争がないから、債権者らは債務者に対して昭和四四年九月一日以降毎月二〇日限り右月額相当の賃金請求権を有することになる。

三仮処分の必要性

<証拠>をあわせると、債権者らは右賃金を唯一の収入源としてその生活を営む労働者であるところ、本件免職以後右収入の途を絶たれ、動労から生活資金の貸与を受けていることが一おう認められるから、特段の事情の認めるべきものがないかぎり、右賃金の支払を受けられないときは、債権者らはただちにその生活に困窮して著しい損害をこうむるおそれがあると認めるのが相当である。本件仮処分の必要性は肯認できる。

四結び

以上述べたとおりであるから、債権者らの本件仮処分の申請は、被保全権利及び保全の必要性について疎明があるものというべきであるから、債権者らに保証を立てさせないで、これを認容することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。(兼築義春 中川幹郎 吉川正昭)

別表A

電車番号

始発駅

終着駅

抑制駅

抑制時分

1

四二八F

豊田

東京

神田

一一分

2

四四〇F

高尾

東京

御茶の水

二一

3

四〇二T

豊田

東京

水道橋

二三

4

五二四B

武蔵小金井

千葉

飯田橋

二六

5

四〇四T

豊田

東京

市ケ谷

三二

6

五二六B

武蔵小金井

千葉

四ツ谷

三一

7

五一八B

中野

千葉

信濃町

一八

8

五〇六T

豊田

東京

千駄ケ谷

一二

9

臨五〇八T

三鷹

東京

代々木

一二

10

五〇〇A

高尾

東京

新宿

九.五

11

五二八B

武蔵小金井

千葉

大久保

一六

12

六五六C

中野

千葉

東中野

一六

13

五三〇B

武蔵小金井

東京

中野

一九

14

五二二F

高尾

東京

高円寺

一七

15

五三二B

武蔵小金井

千葉

阿佐ケ谷

一七

16

五〇八T

豊田

東京

荻窪

一七

17

五三八F

高尾

東京

西荻窪

一三

18

五二四F

高尾

東京

吉祥寺

一五

別表B

電車番号

始発駅

終着駅

運休区間

1

六五二C

中野

千葉

中野―千葉

2

五〇三C

津田沼

飯田橋

御茶の水―飯田橋

3

五五三C

千葉

中野

御茶の水―中野

4

七〇二C

飯田橋

千葉

飯田橋―千葉

5

四二〇A

高尾

東京

三鷹―東京

6

七〇〇T

高尾

東京

高尾―東京

7

六二一A

東京

高尾

東京―高尾

8

五〇三A

東京

高尾

三鷹―高尾

9

六〇二A

高尾

東京

高尾―東京

10

六二五T

豊田

高尾

豊田―高尾

11

六二四T

高尾

東京

高尾―武蔵小金井

12

五四一F

東京

高尾

立川―高尾

13

七〇二T

高尾

東京

高尾―東京

14

七〇四T

高尾

東京

高尾―東京

15

七〇六T

高尾

東京

高尾―東京

16

八三二T

高尾

東京

高尾―東京

17

六一六T

豊田

東京

豊田―東京

18

七二三T

東京

高尾

東京―高尾

19

八二六T

武蔵小金井

東京

武蔵小金井―東京

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